アパレルOEMの品質を大きく左右するのが、どの工場でつくるかです。ひと口に縫製工場といっても、得意なアイテムや持っている設備は工場ごとに違います。ここでは、アパレルの工場にどんな種類があるのかを整理したうえで、工場の探し方と、探すときにかかる見えないコスト、複数の工場と取引するときの管理の手間についてまとめます。
同じ「縫製工場」でも、得意なものは違う
工場には、それぞれ得意なアイテムがあります。伸びる生地を縫うのか、伸びない生地を縫うのか、薄いのか厚いのかによって、使うミシンも、職人が身につけている技術も変わるからです。
得意分野から外れるアイテムを頼むと、断られることもあれば、受けてもらえても仕上がりに差が出ることがあります。つくりたい商品が決まったら、まず「それを得意とする工場」を探すことが、品質への近道です。
アイテムで見る、工場の種類
アパレルの工場は、扱う生地やアイテムによって、おおよそ次のように分かれます。
| 工場の種類 | 主なアイテム | 特徴 |
|---|---|---|
| カットソー | Tシャツ、スウェット、パーカー | 伸びる生地に合わせたミシンと縫い方 |
| 布帛(軽衣料) | シャツ、ブラウス、ワンピース | 伸びない生地を、細かく正確に縫う |
| 布帛(重衣料) | ジャケット、コート | 芯地や裏地を使い、工程とアイロンワークが多い |
| ボトムス | パンツ、スカート | ウエストや股上など、寸法の精度が要 |
| ニット | セーター、カーディガン | 糸から編み立て、パーツをつなぎ合わせる |
| デニム | ジーンズ、デニムジャケット | 厚地用のミシン。洗い加工の工場と連携する |
| ダウン | ダウンジャケット、中わた入りアウター | 羽毛を詰める設備と、羽毛が抜けない縫製 |
| バッグ・小物 | トート、ショルダー、ポーチ | 厚物用のミシン、芯材や金具の扱い |
| 加工 | プリント、刺繍、洗い加工 | 縫製とは別の専門工場が担うことが多い |
同じカットソー工場でも、薄手が得意な工場と厚手が得意な工場、ベビー服や機能素材のスポーツウェアを専門にする工場があります。表の分類は入り口にすぎず、実際にはもう一段細かく、工場ごとの得意分野を見ていく必要があります。
中国の主な産地
中国では、アイテムごとに工場が集まる産地があります。代表的な例を挙げます。
- 浙江省桐郷市の濮院:セーターなどのニット
- 浙江省湖州市の織里:子供服
- 広東省東莞市の虎門:婦人服
- 広東省広州市の新塘:デニム
- 浙江省寧波市:紳士服、シャツ
- 福建省の晋江・石獅:スポーツウェア、カジュアルウェア
- 江蘇省南通市:寝具やタオルなどの家庭用繊維
産地には、工場だけでなく生地や付属の市場、加工の業者も集まっています。ただし、同じ産地の中でも工場ごとに規模や品質の水準は大きく違います。産地で選ぶのではなく、あくまで工場単位で見極めることが大切です。
工場の探し方
工場を探す方法は、大きく分けて次のようなものがあります。どの方法にも向き不向きがあり、組み合わせて使うのが一般的です。
マッチングサイト・BtoBサイト
工場と発注者をつなぐサイトや、海外の工場が登録するBtoBサイトから探す方法です。手軽に候補を集められる一方で、掲載されている情報だけでは、実際の設備や品質までは分かりません。
展示会
国内外の展示会で、工場の担当者と直接話し、サンプルを手に取って確かめられます。出展しているのは営業に力を入れている工場が中心で、会期や出張の時間と費用もかかります。
取引先や知人からの紹介
実際に取引した人の話を聞けるため、信頼できる情報が得られます。ただ、紹介元のブランドに合っていた工場が、自社のアイテムや数量にも合うとは限りません。
産地を訪ねる
工場に足を運び、設備や作業の様子、検品の体制を自分の目で確かめる方法です。もっとも確実ですが、時間も費用もかかり、言葉や商習慣の違いにも向き合う必要があります。
商社・OEM会社を通す
工場とのつながりを持つ会社に、工場選びから任せる方法です。自分で探す手間は省けますが、どの工場でつくっているのかが見えにくいかたちもあります。
工場探しにかかる、見えないコスト
工場探しの費用は、見積もりには表れません。けれど実際には、次のようなコストが積み重なっています。
探して、比べる時間
候補を探し、問い合わせ、見積もりをそろえて比べる。この作業だけで数週間から数か月かかることも珍しくありません。その間、商品の企画は止まったままになります。
サンプルの費用と往復
新しい工場では、サンプルが一度で思いどおりに上がることはまれです。修正のたびにサンプル代と送料、そして1〜2週間ほどの時間がかかります。
現地を確かめるための出張
海外の工場であれば、設備や品質を確かめるための渡航費と日数がかかります。確かめずに進めれば、そのぶんリスクを抱えることになります。
言葉と商習慣の壁
海外の工場とのやり取りでは、言葉の壁が避けられません。生地や縫製の専門用語は翻訳ツールでは正確に伝わりにくく、「言ったつもり」「分かったつもり」のずれが、そのまま仕上がりの違いになって返ってきます。通訳や翻訳を頼む費用に加えて、支払いの条件や納期の考え方といった商習慣の違いにも、慣れるまでは時間がかかります。
最初の生産でのつまずき
仕様の伝え方、品質の基準、連絡の取り方。どれほど良い工場でも、最初の取引ではお互いの「当たり前」をすり合わせる時間が必要です。工場を替えれば、このすり合わせはまた一からやり直しになります。
一つの工場にすべてを任せるリスク
取引先を一つの工場にまとめれば、やり取りは楽になります。ただ、そこにはいくつかのリスクもあります。
得意分野の外で、品質が落ちる
カットソーが得意な工場に、シャツやアウターまで頼めば、得意なアイテムと同じ品質で仕上がるとは限りません。受けた工場が、得意でないアイテムを見えないところで別の工場に回していることもあります。
工場が止まると、すべてが止まる
繁忙期で生産ラインが埋まる、設備が故障する、停電や生産の規制で稼働が止まる。一つの工場に集中していると、こうした事情ひとつで、ブランドのすべての商品の納期が遅れてしまいます。
ほかに頼める先がなくなる
一つの工場に頼り切ると、価格や納期の条件を比べる相手がいなくなります。工場の方針が変わったり、取引が続けられなくなったりしたときに、すぐに移れる先がないことも大きなリスクです。
アイテムが増えると、工場も増える
ブランドの商品がカットソー、シャツ、ニット、アウターと広がれば、それぞれを得意とする工場が必要になり、取引する工場の数も増えていきます。一つの工場にすべてを頼めば先に見たリスクを抱え、工場を分ければ管理の手間が増える。多くのブランドが、このはざまで悩んでいます。
複数の工場と取引するときには、たとえば次のような管理が必要になります。
- 工場ごとに違う最小ロット、納期、支払いの条件を把握する
- サンプルから量産までのスケジュールを、工場ごとに並行して進める
- 工場によってばらつきやすい品質の基準や、検品のやり方をそろえる
- ネームや下げ札などの付属を、各工場に手配してそろえる
- 発売日に合わせて、すべての商品の入荷をそろえる
- 工場ごとに分かれる輸送や通関、支払いの手続きをまとめる
工場が2つ、3つと増えるごとに、やり取りの量は単純な足し算以上に増えていきます。生産の担当者が一人でこれを抱えると、どこかで確認が漏れ、それが納期の遅れや品質の問題につながります。
工場を見極めるときの視点
工場を選ぶときには、見積もりの金額のほかに、次のような点を確かめておくと判断しやすくなります。
- つくりたいアイテムと近い製品を、実際に生産しているか
- 設備やラインの規模が、発注する数量に合っているか
- 縫製の途中と出荷前に、検品をしているか
- 繁忙期や春節の前後に、どのくらい生産が詰まるか
- 日本向けの生産経験があり、寸法や品質の基準に慣れているか
- 担当者とのやり取りが、スムーズにできるか
工場とは、長く付き合うほど良くなる
同じ工場と取引を重ねるほど、仕様書に書ききれない細かな好みや品質の基準が、工場の側にも積み重なっていきます。再生産のときに同じ品質が出やすくなり、繁忙期にも優先して生産を組んでもらいやすくなります。工場探しは、一度で終わる作業ではなく、信頼できる工場との関係を育てていく仕事でもあります。
MONOIDと工場
MONOIDは自社の工場を持っていますが、すべてを自社工場でつくるわけではありません。納期が急ぎの案件や特殊な仕様の案件では、工程や日程を自分たちで組める自社工場の強みを活かします。それ以外の案件では、アイテムや素材、求める品質に合わせて、それを得意とする工場を選びます。お客様の状況に合わせて、自社工場と協力工場を使い分けています。協力工場は、私たちのグループが南通を拠点に17年以上、日本向けの生産と貿易に携わってきた中で、得意分野と品質を確かめながら取引を重ねてきた工場です。
カットソーとニット、アウターのように、カテゴリの違う商品をつくる場合でも、ブランドの窓口はMONOID一つです。ブランドとのやり取りは東京の窓口が日本語で行い、工場ごとの調整や進行、検品は、南通に常駐する現地チームがまとめて担います。ブランドは、工場を一から探したり、複数の工場とそれぞれやり取りしたりすることなく、商品づくりそのものに時間を使うことができます。
よい服は、それを得意とする工場から生まれる。