MONOIDの中国生産を支える現地チームは、江蘇省の南通(なんつう)に拠点を置いています。日本ではまだあまり知られていない街ですが、上海の対岸に位置し、100年以上前から繊維とともに発展してきた工業都市です。南通がどんな街なのか、そしてこの街を拠点に私たちが何をしているのかをご紹介します。
上海の対岸にある、長江デルタの工業都市
南通は、長江の河口の北岸に位置する街です。川を挟んだ対岸には上海と蘇州があり、中国でも有数の経済圏である長江デルタの一角を占めています。
かつては長江に隔てられていましたが、2008年に蘇州と結ぶ蘇通長江大橋が開通し、2020年には上海と南通を結ぶ鉄道も開業しました。現在は上海まで鉄道で約1時間。上海の港や空港、長江デルタに広がる各地の産地にも行き来しやすい場所になっています。
日本と空でつながる、南通興東国際空港
南通には、南通興東国際空港があります。国内の主要都市と結ばれているほか、日本との直行便も開かれてきました。2024年10月には大阪(関西)との旅客便が毎日運航で就航し、2025年3月には東京(成田)との貨物便も就航しています。
上海の浦東・虹橋の二つの空港も利用できるため、日本から工場を訪ねるときの選択肢は多く、生産した製品を日本へ送り出す手段も複数あります。「現地に行って確かめる」ことが特別な出張にならない。この交通の便の良さは、生産管理にとって小さくない意味を持っています。
100年以上続く、繊維の街
南通と繊維の結びつきは、19世紀の終わりにさかのぼります。1895年、実業家の張謇(ちょう・けん)がこの地に紡績工場「大生紗廠」を創業しました。中国で最も早い時期に生まれた近代的な紡績工場の一つで、南通はここから繊維の街として歩み始めます。
現在の南通は、寝具やタオルなどの家庭用繊維の一大産地として知られています。海門区の叠石橋(ディエシーチャオ)にある家庭用繊維の市場は国内市場の半分以上を占めるといわれ、扱われる製品は130以上の国と地域に輸出されています。生地や染色、縫製、資材を扱う業者も多く、繊維のものづくりに必要な知識と人が集まる街です。
日本企業が拠点を置く街
南通は、日本企業とのつながりが深い街でもあります。現在、約1,300社の日本企業が南通に進出しているといわれ、日本は南通にとって有数の海外投資元です。1987年には愛知県豊橋市、1993年には大阪府和泉市と友好都市の関係を結んでいます。
とくに繊維の分野では、日本を代表する素材メーカーが早くから南通に生産拠点を構えてきました。いくつか例を挙げます。
東レ
1994年に設立された東麗酒伊織染(南通)は、東レグループの中国における長繊維テキスタイルの主要拠点です。生産する織物やニットの約8割が衣料用で、日本・欧州・北米・中国へ供給されています。
帝人
帝人グループの南通帝人は、1994年に設立されたポリエステル長繊維織物の織布・染色加工の会社です。スポーツウェアやダウンジャケット向けの高密度織物を主力に、約1,300人が働いています。
川崎重工業
中国の海運大手COSCOと川崎重工業が50%ずつ出資する造船会社、南通中遠海運川崎船舶工程(NACKS)があります。南通は造船・海洋工学の一大拠点でもあります。
王子製紙
王子製紙グループの江蘇王子製紙が、南通に大規模な製紙工場を構えています。
旭化成
旭化成精細化工(南通)が、塗料などに使われる機能性材料を生産しています。2025年には南通経済技術開発区に新工場が完成しました。
東レや帝人のように、日本の素材メーカーが衣料用の生地を南通でつくっている。この街が、日本のアパレルと深く結びついた産地であることがよく分かります。
南通を拠点に、現地チームが担うこと
私たちのグループは2010年に本社を南通に移し、それから15年以上、この街を拠点に日本向けの生産や貿易に携わってきました。MONOIDの中国生産は、南通に常駐する自社チームが担っています。
生産する工場は、アイテムや素材、求める品質水準に合わせて、案件ごとに選んでいます。南通はあくまで、そのための拠点です。現地チームは選んだ工場に直接入り、報告を待つのではなく、自分たちの目で確かめることを仕事の基本にしています。
- 生地や付属、資材が仕様どおりに揃っているかの確認
- 縫製の段階での、寸法や仕上がりの確認
- ブランドタグや下げ札など、ブランド資材のチェック
- 出荷前の検品と、基準に届かなかった場合の是正対応
- 第三者検品機関と連携した出荷前のチェック
- 送金や輸出入の書類、進捗の管理
東京と南通の役割分担
MONOIDでは、東京・麹町の日本側窓口と南通の現地チームが、一つの案件を一緒に管理しています。
東京が担うこと
ブランドとのやり取りの窓口になり、デザインや要望を仕様書に落とし込みます。原価や納期の判断材料を整理し、ブランドが決めるべきことを決められるようにするのが東京の役割です。
南通が担うこと
その仕様書をもとに、工場との調整、工程の確認、検品、出荷までを現場で進めます。仕様書と実物のあいだにずれがあれば、量産が進む前に見つけて東京に戻すのが南通の役割です。
両者が同じ仕様書を見ているからこそ、日本と中国のあいだで情報が途切れません。ブランドから見れば窓口は一つのまま、現場の状況まで確かめられる体制になっています。
産地の近くにいること、工場に入ること。中国生産の品質は、その積み重ねで決まっていく。